こんにちは、アサヒナです。
僕には、定期的に足を運ぶ街があります。
三軒茶屋です。
飲みに行くわけではありません。
用事があるわけでもない。
ただ、行く。
駅で降りて、昔住んでいたあたりを歩いて、そのまま帰ってくる。
それだけです。
我ながら、変な習慣だと思います。
でも、行くたびに少しだけ背筋が伸びます。
これがないと、僕はたぶんダメになる。
今日は、その理由をお話しします。
家賃すら払えなくなった、あの部屋
三軒茶屋は、僕が新卒のときに住んでいた街です。
そして、起業を決めた街でもあります。
昔から服が好きで、原宿や渋谷、表参道をよく歩いていました。
そのあたりを起点に部屋を探すと、世田谷や目黒の方面に目が向く。
場所も、物件も、家賃も、ちょうどよかった。
それが三軒茶屋でした。
社会人生活が始まったころは、素直にワクワクしていました。
なのに、半年も経たないうちに会社を辞めています。
起業すると決めたからです。
そこからが、本当にきつかった。
とにかく、お金がありませんでした。
今の妻に、近くのスーパーで食材を買ってもらう。
それを二人で分けて食べる。
そんな日が続きました。
最後のほうは、家賃を払うことさえ大変になっていた。
引っ越すときの費用も、結局は親に払ってもらっています。
人に自慢できる話ではありません。
「社会人として、もう少し計画を持ってやれよ」
今でも、当時の自分にそう言いたくなります。
住んでいた期間は、決して長くない。
それでも、あの街の記憶だけは色濃く残っています。
苦しかった時間ほど、濃く焼き付くんです。
今が苦しいなら、その景色を撮っておいてほしい
ここから先は、今まさに苦しい人に向けて書きます。
通帳の残高を見るのが怖い。
来月の売上が、まったく読めない。
安すぎる仕事だとわかっていても、断れない。
家族には、まだ言えていないこともある。
心当たりがあるなら、この先を読んでください。
気持ちは、本当にわかります。
僕も、同じ場所に立っていました。
そのうえで、ひとつだけお願いがあります。
今のこの瞬間を、写真に残しておいてほしいんです。
自分の表情でもいい。
仕事をしている机まわりでもいい。
住んでいる部屋の、生活感のある一角でもかまいません。
何でもいいので、残しておく。
「そんな余裕はない」
そう思ったかもしれません。
僕もあの頃、記録なんて1ミリも考えていませんでした。
だから、時間をかけろとは言いません。
かかるのは、3秒です。
スマホを出して、今日の机を1枚撮る。
それで終わります。
後から振り返ったとき、それはいい思い出になります。
ただ、理由はそれだけではありません。
記憶は、都合よく書き換わっていく
人は、苦しさを正確には覚えていられません。
時間が経つほど、記憶はきれいに整理されていきます。
情けなさも、みじめさも、心細さも、少しずつ薄まっていく。
そして残るのは、うまくいった自分の物語だけ。
「あの頃は大変だったけど、まあ、乗り越えたよね」
そんな一行に要約されてしまう。
これが、思っている以上に危ないんです。
事業がうまくいき始めると、人は簡単に勘違いをします。
傲慢になる。
偉そうになる。
そういう経営者や起業家を、僕は何人も見てきました。
お金があるから偉いわけではありません。
経営者だから偉いわけでもない。
頭ではわかっているはずなのに、なぜか勘違いしてしまう。
そのとき、当時の写真が効きます。
理屈ではなく、一瞬で気持ちが戻ってくるからです。
「やっておけばよかった」
後になってそう思っても、もう撮れません。
「自分は調子に乗らない」と思っている人ほど危ない
ここで、先回りしておきます。
「自分はそういうタイプじゃない」
「そんなに稼いでないから関係ない」
僕も、まったく同じことを思っていました。
でも、勘違いは、ある日突然やってくるものではありません。
少しずつ、静かに入り込んできます。
返信が、少し雑になる。
人の話を、最後まで聞かなくなる。
自分より年下の人から学ぶことを、無意識に避けはじめる。
そのどれもが、小さな変化です。
だから、自分では気づけません。
厄介なのは、周りも指摘してくれないこと。
うまくいっている人に、わざわざ苦言を呈する人は少ないからです。
気づいたときには、誰も本当のことを言わなくなっています。
僕はコンサルタントという仕事柄、扱いの落差をよく知っています。
成果が出れば、神様のように扱ってもらえる。
成果が出なければ、ゴミのように扱われます。
扱いが変わっても、自分の中身は何ひとつ変わっていません。
なのに、良い扱いに慣れると、それを自分の実力だと錯覚してしまう。
そもそも、経営の世界に安定や安泰なんてものは存在しません。
外から見れば順調そのものの人が、裏では何年も赤字だった。
そういう話は、まったく珍しくないんです。
良いときもあれば、悪いときもある。
それが延々と続いていくのが経営です。
今の状態は、今の状態でしかない。
その記録は、いつか誰かに届く
もうひとつ、実利の話もしておきます。
苦しかった時期の記録は、そのまま発信の素材になります。
ひとり社長やフリーランスの仕事は、人に選ばれることで成り立っています。
選ばれる理由は、実績だけではありません。
「この人は、自分と同じ場所を通ってきた」
そう感じてもらえるかどうかで、決まることがあります。
きれいな成功談なら、いくらでも転がっています。
でも、家賃が払えなかった夜の話は、その人にしかない。
しかも、後から作り話で埋めることはできません。
あのとき撮った1枚があるかどうかで、話の解像度が変わります。
自分のためだけに残した記録が、結果として仕事につながる。
だから僕は、残しておいてほしいと言い続けています。
僕が、あの街を歩き続ける理由
ありがたいことに、会社は今うまくいっています。
僕はお酒を飲みませんし、特別なグルメでもない。
夜のお店にも行きません。
せいぜい、好きな本を買うか、洋服に少しお金を使うくらいです。
散財するタイプではないと思います。
それでも、ふとした瞬間に、今の生活を当たり前だと感じてしまう。
これが怖いんです。
当たり前になると、感謝が消えます。
感謝が消えると、学ばなくなる。
学ばなくなった経営者が、その後どうなるかは、書くまでもありません。
だから、三軒茶屋に行きます。
駅を降りて、当時住んでいたあたりを歩く。
よく通っていたスーパーの前で、足が止まります。
妻に食材を買ってもらっていたな。
二人で、それを分けて食べていたな。
家賃が払えず、親に頭を下げたことも思い出します。
あのときは、本当に情けなかった。
でも、あの頃があるから今があります。
比べるまでもなく、今の僕は恵まれている。
そう思えた瞬間に、また頑張ろうと思えるんです。
同時に、周りの人への感謝も戻ってきます。
あなたにも、戻れる場所があるはずです
最後に、ひとつだけ。
あなたにも、そういう場所があるかもしれません。
起業直後に借りた、狭いオフィス。
当時住んでいた部屋。
初めて契約書にサインしたカフェ。
うまくいっているときこそ、そこへ足を運んでみてください。
きっと、何か感じるものがあるはずです。
そして今が苦しいなら、今日の景色を1枚だけ撮っておいてください。
その1枚は、いつか自分を守る道具になります。
初心は、気持ちだけで保てるものではありません。
戻れる場所と、残しておいた記録。この2つが、仕組みとして効きます。
お金は、使えば消えます。
でも、あの頃の経験は消えません。
一生、自分の中に残り続けます。
僕も、これからも三軒茶屋に通い続けます。
一緒に、初心を忘れずにやっていきましょう。
では、今日はこの辺で。
ありがとうございました。
