こんにちは、アサヒナです。
今日は、小さな愚痴から始めます。
「ギガファイル便」というサービスを使ったことはあるでしょうか。
大きな動画ファイルを相手に届けるための、無料の転送サービスです。
僕はクライアントに動画を渡すとき、ほぼ毎回これを使っています。
容量を気にせず送れて、保持期限も100日まで指定できる。
サービスそのものは、文句なしです。
ただ、ひとつだけ我慢できないものがあります。
広告です。
今日は、その小さなイライラから始まる話をしたいと思います。
毎回、閉じるボタンを探すところから始まる
ページを開くと、画面全体が広告で覆われています。
本来の画面は、その下に隠れている。
だから「クローズ」を押さないと、何も始まりません。
ここまでは、よくある話です。
問題は、そのボタンの位置が毎回変わることです。
右下にあったり、左下にあったり。
ずっと画面の下の方に逃げていることもあります。
「どこにあるんだ」
画面の端から端まで、目で追いかける。
やっと閉じても、今度は上下左右に広告がびっしり並んでいます。
無料なのだから、仕方がない。
頭では、そう理解しています。
広告が入るから、あのサービスはタダで成立している。
誰かがコストを負担しているわけで、文句を言う筋合いはありません。
それでも、毎日のこととなると疲れます。
だから、いつも同じことを思っていました。
「お金を払うから、広告なしにしてくれないかな」
冗談ではなく、本気でした。
調べてみたら、僕の愚痴には値段が付いていた
ここまで書いて、ふと気になりました。
本当に、有料の選択肢はないのだろうか。
調べてみたら、ありました。
会員プランに入れば、広告が消える。
月額198円です。
案内のページには、こう書かれていました。
「買えるものは、時間と、静けさ。」
静けさ。
まさに、僕が欲しかったものです。
その場で登録しました。
画面が、静かになりました。
長いあいだ探し続けた閉じるボタンは、もう出てきません。
情けない話ですが、僕は調べもせずに文句を言っていたんです。
「お金を払うから」は、市場が出している合図です
ここが、今日いちばん伝えたいところです。
「お金を払ってでも、この面倒から逃げたい」
そう思った瞬間は、ただの愚痴ではありません。
需要が、目の前に現れた瞬間です。
しかも今回は、答え合わせまで済んでいます。
僕がひとりで思っていたことに、すでに値段が付いていた。
同じことを感じた人が、他にも大勢いたという証拠です。
マーケティングの世界では、よくリサーチが大事だと言われます。
ただ、リサーチは外に出かけていくものだと思われがちです。
本当は、自分の1日の中にも転がっているんです。
僕たちは、お客様の本音を知るためにアンケートを取ります。
個別に時間をもらって、話を聞くこともある。
でも、そこで出てくる言葉には建前が混じります。
人は、改まって聞かれると格好をつけるからです。
一方で、自分が毎日感じているイライラに建前はありません。
実際に使っていて、実際に困っていて、お金を出す気まである。
これ以上に正直なデータは、そうそう手に入りません。
しかも、調査費はゼロです。
困っている人が増えるほど、イライラは商品になる
動画を送りたい人は、年々増えています。
YouTubeに投稿している人。
オンライン講座を作っている人。
編集した動画を納品している人。
撮影機材の画質が上がるほど、ファイルは重くなります。
メールの添付では、もう運べません。
この不便は、個人の好みの問題ではありません。
仕事で動画を扱う人なら、ほぼ全員が通る道です。
つまり、同じところで毎日つまずいている人が大勢いる。
クラウドストレージの共有リンクという手もあります。
ただ、相手にアカウントや操作をお願いすることになる。
「このURLを開いて、落とすだけ」の手軽さには勝てません。
だから、あの会員プランは成り立っています。
月額198円は、ファイルを送る機能に付いた値段ではありません。
「毎回、閉じるボタンを探す時間」に付いた値段です。
言い換えると、イライラそのものが商品になっている。
僕には、ここがしばらく見えていませんでした。
無料のサービスだからと決めつけて、そこで考えるのをやめていた。
不満は感じていたのに、その先を見なかった。
合図は出ていたのに、受け取っていなかったわけです。
「自分には無理だ」で、思考を止めていないか
ここで、正直なことを書きます。
僕にあのサービスの代わりが作れるかというと、作れません。
ファイル転送の仕組みには、サーバーの費用がかかります。
預かったデータを守る責任も重い。
本気でやるなら、エンジニアの採用が必要になります。
ひとり社長やフリーランスの規模で挑むには、現実的ではない。
ここは、はっきりそう思います。
でも、作れないことと、考えないことは別の話です。
多くの人は、不満を感じた次の瞬間に蓋をします。
「どうせ自分には無理だし」
「そういうのは、大きい会社がやることだ」
「エンジニアでもないのに」
気持ちは分かります。
僕も、何度も同じ言葉で片付けてきました。
この言葉は、便利なんです。
口にした瞬間、考えなくてよくなります。
そして、罪悪感もほとんど残りません。
ただ、そこで止まると、せっかくの合図が毎回捨てられていきます。
作れる時代だからこそ、気づける人が強い
ここに、時代の変化がひとつ重なります。
AIのおかげで、ありとあらゆるものが作れるようになりました。
文章も、デザインも、簡単な仕組みも。
昔なら外注して何十万円もかかったものが、数時間で形になる。
ここは、僕自身も毎日感じています。
AIに頼めば、文章も企画書もすぐに出てきます。
でも、何を書かせるかを決めるのは、最後まで自分の仕事でした。
つまり、作る力そのものでは差がつきにくくなったということです。
では、何が残るのか。
何を作るかを決める力です。
どこに不便が放置されているのか。
誰が、どんな場面で、お金を払ってでも逃げたいのか。
そこに気づける人だけが、AIという道具を正しい方向へ向けられます。
気づけない人は、立派な道具を持ったまま立ち尽くします。
作れることと、売れることは違う。
この差は、これからどんどん開いていくはずです。
規模を落とせば、自分の射程に入る
では、僕たちに何ができるのか。
答えは、サービスを作ることだけではありません。
ギガファイル便そのものが作れなくても、やれることはあります。
重い動画の渡し方で困っている人は、確実にいます。
どう送れば、相手の手間が減るのか。
クライアントには、どんな手順で案内すればいいのか。
それを整理して渡すだけでも、立派な価値になります。
自分の納品フローを作り直してもいい。
毎回、口で説明している手順を1枚にまとめてもいい。
規模を落とせば、たいていの不満は自分の射程に入ってきます。
実際、世の中の商品の多くは、そうやって生まれています。
誰かが自分の不便を解決して、同じことで困っている人に渡した。
発明というより、お裾分けに近い。
不満の大きさに怯む必要はありません。
扱えるサイズに切り分ければいいだけです。
あなたの商品にも、閉じるボタンがあるかもしれない
もうひとつ、考えてほしいことがあります。
不満は、他人のサービスにだけあるものではありません。
自分が提供している側にも、必ずあります。
申し込みフォームの入力項目が、多すぎないか。
案内のメールが、どこを読めばいいか分からなくなっていないか。
初回の打ち合わせで、お客様が同じ質問を繰り返していないか。
それは、お客様にとっての「毎回場所が変わる閉じるボタン」です。
しかも、本人は言ってくれません。
黙って、静かに離れていくだけです。
僕も、言われてはじめて気づいたことがあります。
案内の文章が長すぎて、どこから申し込めばいいか分からない。
作っている側は、慣れているので気づけません。
立場が変わらないと、見えない世界があります。
使う側に回ったときだけ、提供する側の粗が見える。
だから、客の立場で感じたイライラは宝物なんです。
その感覚が新しいうちに、自分の商品へ当ててみてください。
「嫌だな」で終わらせるか、「自分ならどうするか」と考えるか
今日の話は、壮大なアイデアを出そうという話ではありません。
不満を感じたときに、ひと呼吸だけ置いてほしいという話です。
「自分だったら、これをどう直すだろうか」
「もし開発チームがいたら、どこから手をつけるだろうか」
「もし自分が中小企業の社長なら、ここにいくら出すだろうか」
考えたところで、今日は何も変わりません。
思いついたことの大半は、形にならずに消えていきます。
それでも、考える癖のある人は、ある日ふいに答えにたどり着く。
逆に、「嫌だな」で終わらせ続けた人のところには、何も残りません。
同じ広告を見て、同じ時間だけイラッとしているのに、です。
この差は、1年も経つと簡単には埋まらなくなります。
大事なのは、思いつくことではありません。
考える場所に、自分を置き続けることです。
僕も、えらそうなことを言える立場ではありません。
今回やったことは、ただ検索しただけです。
それまでは、ずっと閉じるボタンを探していました。
それでも、ひとつ決めたことがあります。
「嫌だな」と思ったら、その日のうちに調べてみる。
それくらいなら、今日からできます。
一緒に、日々の「イラッ」を拾い集めていきましょう。
では、今日はこの辺で。
ありがとうございました。
