こんにちは、アサヒナです。
先日、スマホでニュースを眺めていて、指が止まりました。
「TOKYO BASE、初任給40万円」
STUDIOUSやTHE TOKYOを展開している、アパレルの会社です。
一瞬、目を疑いました。
読み間違いだと思ったんです。
アパレルで、40万円。
胸の奥が、ざわっとしました。
嬉しさとは、少し違う感情です。
もっと苦くて、複雑な何か。
今日は、そんな話をしたいと思います。
僕が、アパレルを諦めた日
正直に話します。
僕は、服が大好きです。
学生の頃は、本気でアパレル業界に進みたいと思っていました。
ショップの空気。
シーズンごとに変わる棚。
自分が選んだ服を、誰かが着てくれる瞬間。
全部が、たまらなく魅力的でした。
でも、僕はその道を選びませんでした。
理由は、ひとつです。
給料が、安すぎたから。
周りの大人は、口を揃えてこう言いました。
「あれじゃ、結婚もできないよ」
「やめたほうがいい」
反論できませんでした。
数字を見れば、その通りだったからです。
当時のアパレルは、好きだけでは食べていけない業界でした。
だから、諦めた。
これが、僕の現実です。
あなたにも、似た経験があるかもしれません。
やりたかった仕事を、条件で手放した経験。
あの頃の僕たちは、正しい判断をしたつもりでした。
そして実際、正しかったんです。
当時の相場では。
業界の常識が、ひっくり返った
そのアパレルが、初任給40万円を出す。
しかも、これはTOKYO BASEだけの話ではありません。
オープンハウスグループは、新卒の営業職を月40万円に。
ファーストリテイリングは、幹部候補の初任給を37万円に上げました。
初任給が30万円を超える企業は、2025年度で130社超。
前年度は、58社です。
1年で、倍以上に増えている。
平均初任給も、25万円台で過去最高を更新しました。
初任給を上げた企業は、いまや多数派です。
正直、羨ましいです。
僕が就職活動をしていた頃とは、まったく違う世界。
でも、ここで冷静になってほしいんです。
これは、会社が若者に優しくなった話ではありません。
会社は、優しくなったわけじゃない
なぜ、こんなことが起きているのか。
答えは、ひとつです。
人が、採用できないからです。
TOKYO BASEの40万円には、内訳があります。
固定残業代が、17万2000円。
時間で言えば、月80時間分です。
基本給だけを見れば、20万円台。
つまり、看板の40万円は、精一杯の背伸びでもあるんです。
誤解しないでください。
この会社を批判したいわけではありません。
むしろ、覚悟の表れだと思っています。
それだけの数字を出さないと、人が来ない。
それが、今の採用の現場です。
企業は優しくなったのではなく、追い詰められている。
言い方を変えます。
人が、高級品になったんです。
足りないのではなく、高くて買えない。
ここを読み違えると、僕たちは判断を間違えます。
「いい人がいれば雇いたい」の危うさ
ここで、こんな声が聞こえてきそうです。
「うちは小さい会社だから、そこまでは出せない」
「いい人がいれば、雇いたいんだけどね」
「求人を出しても、応募が来ない」
その気持ちは、痛いほどわかります。
僕も、社員を雇っていた時期がありました。
求人を出して、面接をして、育てて、辞められて。
あの疲労感は、まだ体に残っています。
しかも、かかるのは給料だけではありません。
求人広告に、数十万円。
面接と選考に、何十時間。
入ってから独り立ちするまで、半年から1年。
その間、教える時間は自分の時間から出ていきます。
そして、辞める時は突然です。
この見えないコストは、給与の表に出てきません。
そのうえで今は、もっとシビアな条件が加わりました。
あなたが出せる金額の隣に、40万円の求人が並んでいる。
同じ画面で、同じ求職者が見ている。
その勝負に、勝てるでしょうか。
無理ですよね。
資金力の戦いは、資金力のある側が勝ちます。
そして、その差は開く一方です。
人がいなくて、会社が畳まれている
もう少し、現実の話をします。
2024年度の人手不足倒産は、350件でした。
2年連続で、過去最多の更新です。
注文はある。
仕事もある。
でも、動かす人がいない。
それだけで、会社が終わる。
赤字で倒れたのではありません。
人がいなくて、倒れたんです。
ここには、はっきりしたメッセージがあります。
人ありきのビジネスモデルは、もう前提が壊れている。
これは景気の話ではなく、構造の話です。
構造は、待っていても戻りません。
比べる相手を、間違えていた
僕は長いあいだ、比べる相手を間違えていました。
同じ業種の会社が、新しく人を入れたと聞く。
うちは、ひとりのまま。
それだけで、勝手に落ち込んでいたんです。
でも、他人の会社を見ても、答えは出ません。
基準にすべきなのは、去年の自分です。
去年より、ひとりで回せる範囲が広がったか。
去年より、自分の時間を取り戻せたか。
測るのは、そこだけでいい。
そして、もうひとつ。
「人を採用できない」と嘆くのをやめることです。
嘆いても、相場は下がりません。
だったら、雇わなくても回る形をつくればいい。
同じ現実でも、出口が変わります。
月数千円の右腕という選択
ここで、AIの話をさせてください。
今のAIは、進化が異常です。
リサーチ。
構成づくり。
文章。
デザイン。
たたき台までなら、ほとんど自分ひとりで終わります。
数字で並べると、わかりやすい。
初任給40万円は、年間で500万円を超えます。
社会保険も、教える時間も、そこには乗っていません。
一方のAIツールは、月に数千円から数万円。
年間なら、数万円から数十万円です。
桁が、ひとつ違う。
しかも、採用活動がいらない。
教育も、マネジメントもいりません。
ある日、突然辞めることもない。
先週、僕がひとりで片づけたこと
具体的な話をします。
クライアント向けの市場リサーチを、1本仕上げました。
競合の価格、訴求、広告の出し方。
以前なら、外に頼んでいた作業です。
かかった時間は、半日。
費用は、ツールの月額だけでした。
誰にも指示を出さず、誰も待たせない。
そこが、いちばん大きいと感じています。
もちろん、AIは人の代わりにはなりません。
判断はできない。
責任も持てない。
出てきたものの良し悪しを決めるのは、最後まで僕たちです。
経験のない人が使えば、そこそこの物しか出てきません。
でも、だからこそ相性がいいんです。
経験のある人間が使うと、AIは一気に武器になる。
強い人を、さらに強くする道具。
僕は、そう捉えています。
雇うと、人に支配される
もうひとつ、正直に書きます。
人を雇っていた頃、僕は事業のことを考えていませんでした。
考えていたのは、人のことです。
あの人は今日、機嫌が悪い。
あの人は、そろそろ辞めるかもしれない。
頭の中の席を、その心配が全部埋めていました。
売上は伸びても、余裕は減っていく。
いま振り返れば、僕は人に支配されていたんです。
人生は、短い。
仕事にも、人にも、支配されたくない。
雇わない選択は、自分の時間を守る選択でもあります。
競争から降りる、という戦い方
人材の獲得競争は、これからもっと激しくなります。
大企業は、資金力で殴り合う。
中小企業は、その横で削られていく。
では、僕たちひとり社長は、どうすればいいか。
その競争から、降りることです。
逃げるのではありません。
戦う場所を、変えるんです。
人を雇わない。
AIを使いこなす。
ひとりで回る仕組みを持つ。
かつては、これを「規模が小さい」と言われました。
今は、これが身軽さという武器になります。
固定費の軽い船は、波が来ても沈みにくい。
嵐の時代に効くのは、大きさより機動力です。
あの日の選択に、意味をつける
アパレルを諦めた日のことは、今でも覚えています。
好きなことを、給料で手放した日。
正直、悔しかった。
でも今は、こう思っています。
あの選択があったから、僕は数字を見る側に回った。
食えるかどうかを、感情ではなく構造で考える癖がついた。
その癖が、今の働き方を守ってくれています。
あなたにも、諦めたものがあるかもしれません。
その後悔は、消えなくていい。
ただ、同じ判断を、今の相場でもう一度してほしいんです。
10年前に無理だったことが、今は成り立つ。
道具が、変わったからです。
経営に、安定や安泰はありません。
相場は、これからも動き続けます。
だから、形を変えられる側でいたい。
まずは、来週の予定を見てください。
誰かに頼もうとしていた作業が、1つあるはずです。
それを、AIに渡してみる。
最初は、たぶんうまくいきません。
僕も、何度も作り直しました。
それでも、覚えたことは誰にも奪われません。
お金は税金で減りますが、身につけたものは残り続けます。
雇わずに回る仕組みは、その積み上げの先にできます。
僕も、まだ途中です。
一緒に、もがきながらでも前に進んでいきましょう。
では、今日はこの辺で。
ありがとうございました。
